はぐりぃ らぶりぃ

ぐらんまだより
2回目
「ハグ(抱擁)」と「ラブ」で育てよう 愛着について No.2
かわいい私の孫娘へ


ママ業にはもう慣れたかしら?子育てママは特に体が基本だから、あまり頑張りすぎずに楽しく子育てをしてね。前回のたよりに続き、今日も「愛着」について書きたいと思います。

初めて「アタッチメント(愛着)理論」を打ち出したイギリスのジョン・ボウルビー博士によると、子どもが親の保護を求めて近寄ろうとし(接近欲求)、親が子どもを守って安心感を与えようとする(安全の基地となる欲求)、その互いの行動を「アタッチメント行動」とよび、これは心理的なものでなく非常に生物学的なもので、人がストレスを感じたときに一番おこり易いと言いました。新生児では、空腹、痛み、疲れや眠気など身体的欲求が高まった時、もう少し大きくなると見知らぬ人が自分と親の間に入ってきたり、いつもと違う環境に脅かされたりした時です。こうした時、子どもを一番癒すのが親の抱擁で、愛着関係を深めるための大切な鍵になります。


ぐらんまだより
抱擁は出産直後から赤ちゃんを安心させます。赤ちゃんは心地よかった胎内から、眩しくて騒音のいっぱいの産室に生まれ出てきます。この人生最初のトラウマといえる経験も、生まれてへその緒もそのままに母の胸に抱かれると、胎内で聞いていた母親の声や心音が聞こえて和らぎます。母親も、自分の胸のなかでぴたりと泣きやむわが子に対し、分娩の痛みを忘れ母親として大きな感動を覚えることでしょう。そして1回目にお話ししたオキシトシンやプロラクティンなどの子育てホルモンが、あなた方母親のその後の子育ての大きな助けになります。でも、悲しいことに虐待や放置を受けて育った女の人には、オキシトシンの分泌が少ないので、自分の赤ちゃんを「可愛い」「守りたい」と思ったり、抱いたりする気持ちにならないのです。だからこそ、この様なお母さんを励まして、子育ての楽しさを教えるための「こんにちは赤ちゃん事業」や「子育て支援家庭訪問事業」(違う機会にお話ししましょうね)がとても大切になります。

2006年に面白い実験が発表されました。同じお母さんネズミから生まれた子ネズミたちを二つのグループに分けて、一つのグループには母ネズミを入れて、もう一つのグループには入れませんでした。お母さんネズミはいつものように赤ちゃんたちをなめ、お腹の下で温め、お乳を含ませて子育てしました。すると間もなく子ネズミたちは体が大きくなり、とても快活で、キョロキョロと周囲に興味を示してその環境の探検を始め、お互いにとても仲良く育ちました。一方、母ネズミのいないグループの子ネズミは、スポイトでお乳を与えられただけなので体は小さく、いつもオドオドして、お互いにとても兇暴に育ったといいます。ここで、生後からの環境により、遺伝子までも変えることが出来ることが分かります。

ぐらんまだより ところで、戦後アメリカから日本に入ってきて、今でもまだ言われている「抱き癖」(だっこをしすぎるのは良くない、という意味を含めた言い方です)という言葉が、日本の今の児童虐待と放置の社会問題を引き起こしていることをあなたは知っているかしら。生まれたばかりの赤ちゃんは、母親やその代理の人に抱かれたり、おんぶされたりして密接にくっついて初めて安心感・安全感を得られるのです。ぐらんまの赤ちゃん時代の写真を見ると、いつもママの背中におぶわれていました。赤ちゃんの時に、この「親と一体になる」感覚が無いと、母ネズミ不在で放置された子ネズミのようにオドオドと引っ込み思案で、不安・恐怖・怒りで物事を処理する子ども、そして後にいろいろな問題を起こす少年少女に育ってしまいます。

一方、たくさん抱かれて育った赤ちゃんは、はいはい(這い這い)を始めると「もう抱いてくれなくてもいいよ」、というサインを出して、自分ではいはいをしながらどんどん周りの探検をし始めます。そしてちょっと不安になると親のもとに戻ってきて、抱っこを要求し、それで安心感を得るとまた探検に行きます。ですから赤ちゃんを「甘やかすから」などと言って抱かないとかえって不安に満ちた子どもになり、親がちょっと見えないとパニックを起こして親にすがりつく子になります。

抱かれたりおんぶされたりすることで、乳児の頭の中に「安心」「喜び」「快感」「楽しさ」「満足」などを伝える脳神経回路が沢山出来て、「不安」「恐怖」「怒り」の感情を伝える脳神経回路の機能を抑えることが出来ます。だから親にたくさん抱かれスキンシップをしてもらった子どもは、快活で、いろいろなことに興味を持ち、他の子どもたちと仲良く遊ぶことができるのですね。また共感能力が発達するので、両親が喜ぶことをして、両親が悲しむことや恥に思うことをしないように心がける子どもに育ちます。「抱いて、抱いて育てて」と、ぐらんまが何度もくり返す理由がわかったでしょう?

いくつになってもハグ(抱擁)できる愛情と信頼で結ばれた関係を、あなたたち家族も築いていってくださいね。

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